六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編02】ダメ人間、堀口

 

堀口は名のある大学の学生なのだが、授業にはほとんど出席しておらず、女とギャンブルにしか興味が無いような男だった。麻雀は当然のこと、競馬、競輪、競艇、ナンバーズ、酒を呑むならアミューズメントカジノへ、といった具合。

 
その合間に三人の彼女と上手くやるのだから恐れ入る。
 
細身で長身、マッシュルームのような髪型の彼を、私は心の中で「マッチ棒みたいだな」と思っていた。
 
「長崎さん、スロット打ったことないんスか?」

 

いつものようにチャラチャラした口調で堀口は言った。彼は決して悪い人間ではない、むしろ良い奴なのだが、きっと勘違いされやすいタイプだろう。

「パチンコは1度だけ打ったことあるけど、スロットは無いなぁ」
 
私は麻雀卓を清掃しながら、目も合わせずに軽く返答した。
 
「スロット美味しいッスよ!真面目にやれば余裕で喰っていけますスよ!」

 

・・・こんな言葉を誰が信じるだろうか。喰っていけるというのなら、なぜ君はこんな安い給料で雀荘の店員などやっているのか、と。

 
「へー、そんなに勝てるものなんだ。で、1ヶ月でいくら位儲かるの?」
 
彼が嘘つきだとは思わないが、その言葉に対して懐疑的だった私は、軽く鎌をかけるように言った。
 
「月20万は余裕ッスよ!真面目にやればッスけどね!」
 
スロットに関する知識を全く持ちあわせていなかった私だが、20万という金額には不思議とリアリティを感じた。20万といえばライズ」の給料の約3倍。当時の私にとってはかなりの大金だ。正直、触手が動いたが、何度も出てくる「真面目にやれば」という結びの言葉が引っかかる。
 
石橋があれば壊れるまで叩いて「渡らなくて良かった」と安心する私は、もう少しだけ彼の言葉に金槌を振り下ろすことにした。
 

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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