六本木ヒルズからの七転八倒

【初打編03】「7万円?」

「でもアレなんでしょ?前にテレビで見たけど、狙って止めるヤツ・・・目押しだっけ?出来ないとダメなんじゃないの?」

素っ気ないフリをしながらも、少しずつ情報を引き出して外堀を埋めていく。

「そうッスね~、確かに出来ないとダメッスけど、簡単ッスよ!すぐ出来るようになります!」

どこまでも軽薄ではあるが、その口調は少しずつ熱を帯びてきた。

「こないだなんか7万勝ちましたッスからね!余裕ッスよ!」

・・・その7万円を勝つまでに一体いくら負けているのか。口をついて出そうになった言葉を辛うじて飲み込んだ。

「それはすごいねぇ、羨ましいなぁ。俺でもそんなに儲けられるなら一度行ってみたいかもしれないなぁ」

興味が無さそうな口ぶりに聞こえるかもしれないが、この時すでに、私の心は決まっていた。だが、スロットなるものが私の性に合わず、あまつさえ負けてしまった場合に、堀口との関係がギクシャクすることは避けたかった。そんな打算的な思惑もあって、あくまでも「誘われたから行ってみただけ」という体を取りたかった。慎重派、と言えば聞こえは良いが、実際はズルいだけだ。

「マジっスか!?じゃあ今度一緒に行きましょうよ!デカいイベントがあるんスよ!二人して大勝ちしましょう!」

デカいイベントというのが何なのか理解できなかったが、その文脈から判断すればまぁ良いことなのだろう。首尾よくいけば7万円なんて大金が手に入るのか……「ライズ」の給料の何日分だ?寿司でも食べるか?自称・慎重派はどこへやら。私は早くも勝った気になって皮算用を始めていた。

「じゃあ次の月曜日の朝9時に、水道橋の『スロット デルタ』に集合ッス!任せてください!大丈夫ッスよ!」

堀口がやけに頼もしく見えたのは、金に目が眩んだ私の判断力が鈍っていたからだろうか。

月曜日の朝、はやる気持ちを抑えきれない私は、待ち合わせよりも一時間も早く『デルタ』の前に到着していた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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