六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編03】コンチ4X打てば?

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西武池袋線の通勤ラッシュに十五分ほど揉まれ、池袋へと到着した。改札を抜け、宝くじ売り場の列を横目に見ながら早足にホールへと向かった。お目当てのホールは駅から徒歩五分の場所にある『スロット トヨタ』だ。

このホールは激戦区池袋の中では比較的地味な存在ではあったが、高設定投入率は抜群に良かった。そして、その高設定投入の傾向がわかりやすいというのも、私が足繁く通う理由のひとつだった。

「うへー、結構並んでるね。何人ぐらいかな?」

八時十五分。『トヨタ』に着くと、すでに六十人ほどが並んでいた。先頭はおそらく日が昇る前にはそこにいたのだろう。だが、十五日の『トヨタ』であればこれくらいは当然で、むしろ少ないくらいだ。

「前の人達『サラ金』打つかな?」

裕子が口元に手を当てながら小声で尋ねた。

「おそらくね。というか『サラ金』はもう諦めたほうがいいと思うよ」

私の言葉に、裕子は不満そうに口をへの字に曲げた。次の瞬間、私の腹の真ん中あたりに衝撃が走った。

「寝坊するからでしょ!」

ふざけ半分だったのだろうが、ちょうどみぞおちに裕子のパンチが入り、私は「うっ」と声を漏らしてしまった。私は自分の腹部にめり込んだ裕子の右手を握り、

「ゴメンゴメン、じゃあコンチ4X打てば?こないだも勝ってたでしょ。できればカド台かカド2に座ってね」

そう言って、裕子の握りこぶしを両手で包み込んだ。

開店まで二時間弱。真冬の開店待ちほど辛いものはない。ロングコートにマフラーを装備していても、足元から深々と凍えていく。ホッカイロの代わりに駅で買った缶コーヒーもすっかり冷たくなってしまった。そんな状況でも、隣の裕子は手袋も付けずに熱心に携帯電話を弄っている。よくやるよ、と呆れながら、私は裕子の携帯電話にぶらさがった虹色のストラップをぼんやりと眺め、今日の狙い台を頭の中で確認した。

――ジャグラーの……入り口側のカド台か、その隣

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長崎 正吾

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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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