六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編04】『ドル箱』から『樽』へ

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「どうしなさいました?お兄さま。調子が悪いんじゃありませんことかしら?」

鎌倉あたりにある『聖ナントカ女学院』のお嬢様に話しかけられたのかと思い振り返ると、満面の笑みを浮かべる裕子が立っていた。

「あー、うん。ダメだね。二分の一をハズしたっぽい」

私は当初の予定通り、ジャグラーのカド2を確保したのだが、午後五時現在で持ちコインは下皿に300枚程度。投資金額は一万五千円に達していた。だが、私を憂鬱にさせる理由はそれだけではなかった。もう一つの狙い台だった左隣のカド台が三箱も積んでいるのだ。候補を二台にまで絞っておきながら、最後の二分の一でハズす自分のヒキの弱さが情けなくなってくる。

「そう言うそちらはどうなの?さっき三箱目に突入してたみたいだけど」

入店してすぐ、『サラ金』が満席になっていたことを確認した裕子は、私のアドバイス通り『コンチ4X』のカド台で遊戯していた。裕子は基本的に荒い機種が好みなので、ジャグラーなどのノーマルタイプを打つことはほとんどない。

「今、店員さんにドル箱から『樽』に移し替えてもらっているところですわよ。オホホホ」

裕子は手の甲を頬にあてて、嬉しそうに耳打ちしてきた。このホールは台の上には四箱までしか乗せることができないため、五箱目に突入すると、店員さんがバケツくらいの大きさの『樽』を持って現れるのだ。その『樽』は大量出玉の証であり、それを使うことは打ち手にとってのある種のステータスになっていた。

「相変わらず凄いヒキだね……。俺は、全部ノマれたらこの台はヤメると思う、たぶん」

私がそう言うと、裕子は口を真一文字に結び、右手で敬礼をして自分の台へと戻っていった。その後ろ姿を見送りながら、彼女のヒキの強さには勝てないなぁとぼんやりと考えていると、私の右隣の空き台のデータ表示機をチェックしている男がいることに気がついた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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