六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編05】おそらく低設定ですよ

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このホールのデータ表示機は、総ゲーム数やボーナス回数などの基本的な情報以外にも、ビッグを赤のドット、レギュラーを緑のドットで履歴を表示するタイプだった。

グレーのロングコートの首元から、大きすぎるウインザーノット結びの赤いネクタイを覗かせるその男は、首をひねりながらデータをしばらく眺めた後、意を決したようにサッと椅子に座った。

私は心の中で――その台はおそらく低設定ですよ――と男に話しかけた。だが、私の内なる声が伝わるはずもなく、男は千円札をコインサンドに滑りこませた。

――あらら、入れちゃった

コインサンドから吐き出されるコインの音を聞きながら、私は男に同情した。だが、すぐにそれが愚かしいことであると気がついた。スロットなど遊戯に過ぎないのだし、勝っても負けても全ては自己責任だ。自分が打ちたい台で打ちたいだけ打つのが正しい姿だろう。

そもそも、高設定を掴めず今まさに負けて帰ろうとしている私が、他人の台選びに口に出すなど、愚の骨頂だ。まぁ実際には口に出してはいないのだが。

私は男のことを気にするのをやめ、自分の台へと気持ちを集中した。

――全部飲まれたら追加投資は無しだな

そう思いながら淡々とゲームを消化していく。左隣のカド台はまさに高設定といった挙動で出玉を増やし続けている。私の台はというと、GOGO!ランプに光が灯ることなく120ゲームほど消化し、あっという間に残りコインが100枚ほどになった。

さすがにこの状況からの逆転は厳しいと負けを覚悟し、背もたれに身体を預けて大きく背伸びをした。

その時だった。右隣の男が突然、不可思議な行動をとったのだ。

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  • ノマれたら、ヤメだ。ノマれたら、ヤメだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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