六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編08】対面に座る、赤ネクタイの男

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「長崎さん、調子イイッスね!」

スロットの調子が悪いときは、反比例するかのように麻雀の調子が良い。三連勝を飾った私をおだてる店員に、軽く眉を上げて応えた。ふと壁に目をやると、古びた掛け時計が二十時を指していた。私が『スロット トヨタ』を出てから二時間が過ぎていた。まだメールが来ないということは、裕子はまだ連チャン中なのだろう。

「それでは次回ゲーム代をよろしくお願いいたします!」

威勢のよい店員の声に促され、四回目のゲーム代を支払った時、店のドアが開く音がした。

「おや、高垣さんいらっしゃいませ!すぐに入れますよ!」

店の入口の方に目をやると、ひとりの男が立っていた。その男は、肩口に僅かに積もった雪を手で払い落とし、コートを店員に手渡した。

「高垣さん、こちらへどうぞ!」

高垣というその男は、促された席へ座ることを一瞬だけ躊躇したように見えた。だが、すぐに思い直したのか、私の対面の席へと座り、足元にビジネスバッグを置いた。おしぼりで顔と首筋を軽く拭いてから赤いネクタイを緩めるその仕草を見て、私の頭の中で記憶の回路が繋がった。

――この男、さっきの……

『スロット トヨタ』の店内では顔をジロジロと見ることはしなかったが、大きすぎるウインザーノット結びの赤いネクタイは、間違いない。GOGO!ランプを手製の望遠鏡で覗き込んでいた、あの男だ。

スロット屋で偶然隣に座った男が、二時間後に麻雀卓の対面に座っている。珍しいこともあるものだと思いつつ、私は最初の親を決めるためにサイコロを振った。

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  • 見ず知らずの者と打つ、それがフリー雀荘。見ず知らずの者と打つ、それがフリー雀荘。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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