六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編09】チートイツのみ、1600点

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東場は大きな手が出ることもなく、淡々と進んでいった。南場に入って下家が上家に対して満貫を振り込んだが、次の局では逆に上家が下家に7700点を振り込んだ。結局、ほとんど点棒に差がないまま、オーラスを迎えた。

トップは対面に座る高垣さんで29000点。私は24000点持ちの二着目。トップの高垣さんとは5000点差だ。三着目は下家の23800点、四着目は上家の23200点。全員にトップのチャンスがある大接戦だ。

10巡目。私はようやくチートイツのテンパイが入った。だが、ドラも無いため、このままでは1600点しかない。リーチしてツモるか高垣さんが振り込んでくれれば逆転だが、それは期待薄だろう。もちろん裏ドラが乗れば文句なしなのだが、そもそもリーチを掛けたくなかった。なぜなら、リーチのために1000点棒を出してしまうと、その時点で四着目に転落してしまうからだ。

この大事な局面でこんな手しか入らない自分の弱さを嘆いた。だが、こうなってしまった以上は二着キープでやむなしと考え、静かに『三萬』を河に捨てた。リーチを宣言せず、息を殺して『五萬』の単騎待ちに受けた。

張り詰めた空気のまま終盤へと入り、この局は流局になるかと思われた15巡目。対面に座る高垣さんの手が止まった。「失礼」と小声でつぶやき、顎を左手で掻いた。張り詰めていた空気が一瞬だけ緩み、上家と下家の二人はサイドテーブルのコップに手を伸ばした。私は身じろぎもせず、高垣さんの顔をじっと見つめた。

高垣さんは自分の手牌と捨て牌を何度も見直して、「こっちかな」と自分を納得させるように小さく言った。そして、手牌のちょうど真ん中あたりから牌を一枚つまみ、河へと捨てた。牌と卓がぶつかり合い、タンッと乾いた音が店内に響いた。

「……ロンです」

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  • 赤い五萬は、それだけで一役。役に立つヤツだ。赤い五萬は、それだけで一役。役に立つヤツだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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