六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編13】生きてさえいればいいんよ

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「今日は彼女さんは一緒じゃないの?」

高垣さんは藪から棒に尋ねてきた。私はてっきり、昨日ジャグラーで隣に座っていたことには気がついていないのだと思い込んでいたが、実はしっかりと把握されていたらしい。

「いいなぁ、ヒキの強い彼女さん持って!」

高垣さんは私の右肩を小突いた。それから、お互いのことを話した。高垣さんはオフィス用品を販売する会社の営業マンらしい。同僚たちはノルマ達成に青息吐息だが、自分はすでに今期のノルマをクリアしているから、こうして仕事サボってスロットや麻雀に興じているのだと、鼻歌交じりに教えてくれた。年齢を訊くことはしなかったが、目尻のシワをから三十代後半くらいに見えた。十歳以上は年が離れているであろう私に、なぜ話しかけてきたのだろうと不思議に思った。

「長崎くん、仕事は?」

高垣さんは私の一番の急所を突いてきた。とっさに嘘をついてごまかそうとしたが、うまい嘘が思いつかない。こういう時のためにあらかじめ考えておけばよかったと後悔して首の後ろあたりを掻きむしった。

「何や?プー太郎か?それともパチプロか?もしくはヒモか?」

そう言って高垣さんは高笑いした。どこまで本気で言ったのかは分からなかったが、その全てが正解といえるものだった。何も言えない私の顔を見て、高垣さんは肩を揺らした。その笑顔は決して私を嘲笑するものではなかった。

「まぁな、生きてさえいればいいんよ、人間なんてな」

その言葉と同時に、高垣さんの顔から笑顔が消えた。私はなんとなく視線を外し、自分の台へと向き直った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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