六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編17】「この肉、焼けてる?」

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「昨日、彼女さん、メチャクチャ出しとったな。コンチ4Xで」

「そうですね。彼女、ヒキが強くて」

「頼りになる彼女やな」

高垣さんは表情を緩めて、さらに続けた。

「あの台にはえらい目に遭ったわ」

「いくらくらい負けたんですか?」

「千円だけな」

「千円負けなら勝ったも同然でしょう。あの台、とにかく荒いですからね」

「いや……まぁな」

高垣さんは何かを言いたげだったが、そこで口をつぐんだ。おあつらえ向きにスロットの話になったので、私は意を決して、例の件を尋ねた。ジャグラーで見たアレだ。

「高垣さん、昨日、ジャグラー打ってましたよね?」

「おう、打ってたな」

「その時、なんかこう……GOGO!ランプを覗きこんでませんでした?こうやって、手で覆い隠す感じで……」

私は、両手でトンネルを作り、その穴から高垣さんの顔を覗き込んだ。高垣さんは一瞬だけこちらを見て、すぐに視線を外してした。

「アレな……」

高垣さんはジョッキの底に残っていたビールを全て飲み干した。その顔は、先ほどよりも僅かに曇っているように見えた。冗談めかした聞き方が不味かったかと後悔していると、ふたたびふすまが開いた。今度は野菜の盛り合わせと大盛りの白米が運ばれてきた。あっという間にテーブルの上が一杯になった。

「あと、生、追加な」

店員は「かしこまりました」と笑顔で応え、しずしずと去っていった。私はなんとなく気まずい雰囲気に耐えかね、ジョッキに口をつけた。そもそもビールはあまり得意ではないのだが、無理矢理喉に流し込んだ。ホップの苦味に顔をしかめると、それを見ていた高垣さんがフッと鼻で笑う声が聞こえた。私は少しだけ安堵した。

私が、運ばれてきた野菜を網の上に乗せていると、高垣さんが網の上から一枚の肉を箸で掴み上げた。すると高垣さんは、大漁2の告知ランプの時と同じように、眉間にシワを寄せ、その肉を睨みつけたのだ。冗談とは思えないその険しい表情に、私は思わずタマネギをテーブルの上に落としてしまった。私の動揺に気がついたのか、高垣さんは眉間のシワを緩め、静かに口を開いた。

「この肉、焼けてる?」

私は息を呑んだ。その肉はまだ、血が滴るほど赤々としていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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