六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編19】逆に失礼や

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「スミマセン、焼肉なんか誘っちゃって」

「ええよ、別に。肉自体は好きやしな。ステーキ屋やったらしょっちゅう行くで。焼けたの出てくるからな。それより……」

そこの言葉を遮るように、静かにふすまが開いた。先ほど追加注文した生ビールが運ばれてきた。高垣さんは、それを手渡しで受け取ると、そのまま口へと運んだ。ジョッキの半分ほどを一気に喉へ流し込むと、ジョッキを少し荒っぽくテーブルの上へと置いた。その音に、私は緊張した。

「それより……、謝る方が、逆に失礼や」

高垣さんは屈託のない笑顔をこちらに向けた。それは、『大漁2』を遊戯している時に見た顔と変わらないものだった。私はまたしても口をついて出そうになった「すみません」の言葉をなんとか飲み込んだ。

「せやから、赤五萬も捨ててしまうねん。あの雀荘、なぜかあの卓だけ赤牌に印が付いてないんよな。何よアレ?赤じゃない五萬捨てれば逆転されんかったのにな」

カラカラと笑いながら、高垣さんは網へと箸を伸ばし、タマネギの一番外側の輪を掴みとり、辛口のタレにつけて口へと運んだ。私もタマネギに箸を伸ばした。ほどよい苦味が口の中に広がった。

「もう、乗ってる肉、全部大丈夫ですよ」

「そうか」

しばらく私たちは、食べることに集中した。やはり、大田原牛は値は張るが味は一流だ。この味を覚えてしまうと、安い焼肉屋に行く気がしなくなるという罪な牛だ。

網の上がすっかり空になり、今度はハラミを並べる。それを見ながら、高垣さんは箸を置き、両手を後ろについてのけぞるような格好をした。

「アレや、アレにもエラい目に遭ったわ」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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