六本木ヒルズからの七転八倒

【七色編25】『ジャグリー』さんだよ

←BACK【七色編24】『樽』目指しましょう、最後だし。

桜が見頃を迎えた四月中旬。高田馬場にあるこのスロット屋は、昼過ぎだというのに客付きは三割程度しかない。

「正吾!アナタ浮気してるでしょ!!」

さっきまで『サラリーマン金太郎』を打っていたはずの裕子が、突然私のところに来て、言い放った。店内のBGMに掻き消されないように大声を出したのだろうが、間の悪いことにちょうど曲が終わった瞬間だった。周りの客が一斉にこちらを振り返る。裕子はバツが悪そうに肩をすくめ、隣の台の椅子にちょこんと座った。

「何ですか?藪から棒に。恥ずかしいからやめてくれませんか。浮気なんてしてませんよ。あと、顔が真っ赤ですよ」

私はつとめて冷静に返した。裕子は耳まで真っ赤にしながら、口を尖らせた。

「じゃあこの女は誰なのよ!」

裕子が指差した先には、私が打っている台のパネルがあった。最初から冗談だと分かっていたが、あらためて肩の力が抜けた。

「……あぁ、これね。この人は『ジャグリー』さん。俺の新しい彼女だよ」

「ヒドイ!私とは遊びだったのね!」

裕子は、今にも吹き出しそうな顔で私の方を見つめている。私も一瞬、口角が上がりそうになったが、必死で堪えた。

「仕方ないだろ。そういうお前だって、矢島金太郎さんとはどういう関係なんだよ?」

「あの人とは、もう別になんでもないもん……」

「……全部ノマれたの?」

「……うん」

裕子は小さく頷いた。仕方なく私は、裕子が座った台の下皿にひと掴み分のコインを流し込んだ。裕子の口が「ありがと」と小さく動いた。

「それにしてもさー……」

→NEXT【七色編26】『ジャグラーガール』も同じじゃん!

  • 新しい彼女だよ。怖いくらい足が長いだろ?新しい彼女だよ。怖いくらい足が長いだろ?

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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