六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編01】やはり『タイムクロス』だった

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『男の人生における苦痛ランキング』というものがあったら、私は第八位くらい推したいものがある。それは『女性の買い物に付き合うこと』だ。あちこちの店を散々連れ回されて、参考にするわけでも無いのに意見を訊かれ、「いいんじゃない?」などと答えようものなら「真剣に考えてない!」と怒鳴られる。なんと理不尽な。

百歩譲って、洋服売り場は許そう。自分の隣にいる女性がこれからどんな服を着てくれるのか。やはり自分好みの可愛い格好をして欲しいから、試着室から出てくる彼女を見る目も、多少は真剣になる。

だが、一歩も譲れない場所がある。それが『化粧品売り場』だ。あの、この世にある全ての香水を混ぜあわせたような匂いを嗅ぐと、鼻孔を通じて頭蓋骨の内側から眉間に釘を打ち付けられているような気分になってくる。

裕子はかれこれ三十分以上、茶髪の女性店員と話し込んでいる。二人の間には楕円形の鏡と、いくつかの化粧品の容器が見える。私はその様子を二十メートルほど離れたエレベーターホールの片隅からぼんやりと眺めていた。この距離でも、化粧品売り場独特の匂いが鼻に届く。私は壁に寄りかかり、携帯電話を開いた。いきつけのスロット屋から、夕方の設定発表機種を示唆するメールが届いていた。

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本日は『時間旅行』にお客様をご招待!!
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やはり昨夜予想した通り、『タイムクロス』が対象機種だったようだ。私は当然打ちに行くつもりだったのだが、それを裕子に伝えると、

「新宿のショップのセールが明日までだから、付き合ってね」

と、あっさりと却下されてしまったのだ。それならば『タイムクロス』で勝って、翌日に通常料金で買えばいいじゃないか……というスロッター特有の考えが浮かんだが、最悪の事態を想定して胸の奥にしまい込んだ。

私が携帯電話を閉じ、売り場の方に顔を向けると、裕子がバッグから財布を取り出すところが見えた。どうやら商談が成立したようだ。

→NEXT【乗打編02】想像しただけで、ウンザリだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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