六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編02】想像しただけで、ウンザリだ。

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小走りで駆け寄ってくる裕子の手には、小さなショップバッグが握られていた。

「ゴメンゴメン。待ちくたびれちゃった?」

「いや、大丈夫だよ。何買ったの?」

「化粧水だけのつもりだったんだけど、乳液とファンデーションまで買っちゃった」

裕子は手にしたショップバッグを軽く振ってみせた。私は総額がいくらだったのかが少し気になったが、聞いてしまうと思わず「高っ!」と言ってしまいそうだったので、訊かないでおくことにした。

「五階にメンズフロアもあるけど、見ていく?」

裕子は私の顔を覗き込んだ。

「いや、俺はいいよ。それより外の空気が吸いたい。とりあえずこの建物から出よう」

私がため息混じりに言うと、タイミングよくエレベーターのドアが開いた。二人の女性が降りた後、私と裕子が乗り込んだ。中には、長身の男性とそれに寄り添う女性がいた。私は行き先階数を押そうとしたが、すでに一階が押されていた。静かにドアが締まり、エレベーターがゆっくりと下降を始める。

「もう買うものは無いの?」

私は裕子の耳元でささやいた。

「渋谷のショップも行きたかったけどね……疲れちゃったからいいや」

私は眉を上げて了解した。もしかしたら裕子は私に気を使ってくれたのかもしれないが、ここはお言葉に甘えておくことにした。何しろ今日はヘトヘトだ。これから渋谷の人混みを歩くなど、想像しただけでウンザリする。

エレベーターが一階に到着し、ドアが開いた。ドアのそばに立っていた長身の男性が『開』ボタンを押して「どうぞ」と促してくれた。私は軽く会釈をしてエレベーターを出た。私に続いて裕子がエレベーターを出た時、その背後から声が聞こえた。

「もしかして、裕子じゃない?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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