六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編04】『大神田』と書いて『オオカンダ』

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「大きいに、神様の神に、田んぼの田で『大神田』です」

男は慣れた口調で説明した。おそらく、物心ついた頃から何百回と口にしてきた説明なのだろう。確かに珍しい苗字だ。いっその事、どれか一文字抜いて『大神』か『神田』か『大田』でよかったろうに。もしかしたら元々は『大田』だったが、神様がイタズラ半分に割り込んできたのかな、などと愚にもつかないことを想像した。

「裕子、そちらは?」

阿久津さんは手のひらを上にして、尋ねた。

「あ……あの、長崎正吾です。ど、どうも」

私はかしこまった挨拶が苦手だ。前もって準備できる場合はなんとかなるのだが、突発的な状況になるとロクに言葉が出てこない。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、裕子は私の背中をバンバンと叩いて阿久津さんに笑いかけた。まるで「これがアタシの彼氏だ!」と言わんばかりだ。

「これから時間ある?四人でご飯でも食べようよ。話したいことメッチャあるし!」

裕子は阿久津さんの手を両手で包み込みながら、興奮気味に提案した。

「ゴメン、裕子。あたし達、これから演劇観に行くんだ。だからもう時間があんまりなくて……」

阿久津さんは両手を顔の前で合わせた。裕子は露骨に肩を落とした。だが二人は、近いうちに必ず会おうねと約束した。私と大神田さんは、そのやりとりを微笑ましく見守った。

二人は陽が傾きはじめた新宿の街へと消えていった。背の高い彼の肘のあたりを優しく掴むその後ろ姿は、いかにも幸せそうなカップルに見えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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