六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編08】やる?『ノリ打ち』?

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「『ノリ打ち』はねぇ……別に俺らもやってもいいんだけどね……」

出来立てのカレーを一口頬張る。ほどよい辛さとスパイスの香りが口いっぱいに広がる。ジャガイモは舌と上顎で押しつぶすと崩れてしまうほど柔らかい。私は裕子に向かって親指を立てた。裕子は嬉しそうな顔をしてカレーを口にした。

「『ノリ打ち』において最も大事なことって、仲間内での信頼関係なんだよ」

私がそう言うと、裕子は慌てて水を飲み、

「何?アタシが信用できないって言うの?」

「いや、そういうわけじゃなくてさ……」

もちろん、私は裕子のことを信頼している。むしろ『ノリ打ち』のパートナーとしては適任だとすら思う。裕子は金持ちの家で育ったお嬢様だからか、良い意味で金に無頓着というか、金に汚いところが一切ない。目押しの腕前はそこそこだが、立ち回りに関しては比較的私のアドバイスに素直に耳を傾けてくれる。スロットにおいては、一応私に一目置いてくれているようだった。

それでも私が裕子と『ノリ打ち』をしないのは、ほんの小さなほころびから、今の関係が崩れてしまうことが怖かったからだ。

「そんなにやりたいなら、やる?『ノリ打ち』?」

私はわざと口をへの字に曲げ、右の眉だけを下げて尋ねた。裕子はフォークでプチトマトとレタスを乱暴に刺し、大きな口を開けてそれを放り込んだ。私はカレーを一口食べて、裕子の言葉を待った。

「正吾がやりたくないなら、やらない」

私は胸をなでおろした。さっきの訊き方をすれば裕子は必ず拒否してくれると踏んでいたが、面倒なことにならなくてよかった。

「でも、意外なんだよなぁ……」

裕子はテーブルに置いていた携帯電話を見ながら呟いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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