六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編11】月刊『パチスロキング』

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夜の西武池袋線は家路につく人で溢れていた。私と裕子は十五分ほどつり革に掴まり、石神井公園駅へと降り立った。

「だからさ、何かあったの?」

改札を出たところで私が尋ねても、裕子は 渋い顔をするだけだ。

「何?俺に何か怒ってるの?」

「違う。ちょっと考えてるだけ。それよりコンビニ寄ってこ」

裕子はコンビニのある方を小さく指差した。コンビニに入ると、裕子はATMへと向かった。私はこれといって必要なものは無かったのだが、ふと雑誌コーナーに目をやると今月号の『パチスロキング』が目に入った。とりあえずそれを手に取り、レジへと向かった。

コンビニを出て、私が『パチスロキング』のページをめくろうとした時、裕子が口を開いた。

「恵に……ご飯奢った」

私はコンビニの袋に本を戻し、裕子の顔を覗き込んだ。その表情は、何かに納得がいかない時の顔だった。

「ふーん。イイじゃん、ご飯くらい奢ってあげても。高い店だったの?」

「ううん、二人で七千円くらいだから全然いいんだけどさ……」

そこまでいうと、裕子はまた口をつぐんだ。私と裕子の間には「どちらかがスロットで大勝ちしたら、高いご飯を奢る」という暗黙の約束事がある。その日は寿司でも焼肉でも思う存分食べることが常になっていた。もちろん、支払いが一万円を超えることなどザラにあった。

「三千円ちょっと奢ったってことでしょ?それくらい、いつも俺に奢ってくれるじゃない」

「そうなんだけど……」

裕子は口を尖らせて、私の肘のあたりを掴んできた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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