六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編14】学級委員兼スター

←BACK【乗打編13】『HANABI』とか『大花火』とか…

阿久津さんの給料日の二日後。私と裕子は午前九時ちょうどに『スロットトヨタ』に着いた。

「裕子!こっち!」

『トヨタ』の並び列の最後尾に、手を振る阿久津さんの姿があった。その後ろでは大神田さんが大きな身体を折りたたんで会釈している。

「おはよー。裕子、こないだはホントゴメンねー。これ……」

合流するやいなや、阿久津さんは裕子にお金を渡そうとした。先日の食事代だ。

「イイって別に」

「ううん、こういうのはキチンとしないと。お金にルーズなのは良くないよ」

「そうかもしれないけど……。それじゃあ」

そう言って、裕子は阿久津さんが差し出した千円札三枚と五百円玉一枚を渋々受け取った。さすがは学級委員兼スターだ。良くも悪くもお金に無頓着な裕子とは大違いだ。そのやりとりの後ろで、大神田さんが口を開いた。

「今日は何打つんですか?」

「え……と、ジャグラーか、タイムクロスか大漁2かなぁ」

「AT機は打たないんですか?」

「そうだね、AT機はもっぱらこちらのご専門で……」

私は裕子の肩に手を置いた。そういえば、大神田さんは何歳なのだろう。阿久津さんは裕子と同級生だから、私よりも三歳上ということになる。その阿久津さんと付き合っている大神田さんは、やはり私よりも年上なのだろうか。確かに、落ち着いた物腰と、さほど面識の無い私に向けられる敬語は、年上のものを感じる。それに引きかえ私は、不躾にもタメ口を使ってしまった。こういうところで社会人経験の少なさが露呈していしまう。私はなんとなく気恥ずかしくなり、大神田さんから視線を外すように、列の先頭の方を覗き込んだ。

→NEXT【乗打編15】据え置きか上げ狙いか

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

11月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

戻る