六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編15】据え置きか上げ狙いか

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「恵は何打つの?」

「アタシは『大花火』にしようかな。このお店にもありますよね?」

阿久津さんが私の方に顔を向けた。

「あ、あぁ……ありますよ。入って左から二本目のシマです」

私は『トヨタ』の入り口の方を指差して説明した。

「それにしても、『大花火』なんて打つんですね。かなり目押し上手いんですか?」

私は手のひらを上に向けて阿久津さんに尋ねた。阿久津さんは無言で手刀を顔の前で振った。それを見て、大神田さんが阿久津さんの肩に手を置いた。

「いや、上手いですよ。僕なんかより全然。僕がスロット教えたんですけどね」

大神田さんは照れた顔で笑った。阿久津さんはまだ手刀を振っている。なんとも爽やかなカップルだ。

「森さんは何を?」

不意に大神田さんが裕子に尋ねた。裕子は少し驚いた顔をして

「何打てばいい?」

と、私の顔を覗きこんできた。

「『サラ金』でいいんじゃない?最近は台取りも厳しくなくなってきたみたいだし」

「何番台?」

裕子は私の背中を叩いて急かしてきた。普段は台番で訊いてくることはないのだが。

「何番台……っていうか、もし取れるならカドがいいんじゃない?昨日も設定5の札が刺さってたけど、全然出てなかったからね。据え置きか上げじゃないかな」

「OK!カド台ね。正吾の『読み』ってスゴいんだよ!ピタッと高設定台当てちゃうんだから!」

裕子は、私の服の肘のあたりを掴んでブンブンと振った。裕子がどういうつもりで言っているのかは知らないが、悪い気はしなかった。それからしばらくスロット談義に花を咲かせていると、店の入口から店員が顔を出し、列の前方が動き出した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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