六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編18】ジャグラー打ちたい……

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「ヤメて帰ってもいいよ。無理して打つ必要なんかないさ」

私は答えた。だが、裕子はかぶりを振った。

「こんな時間に帰れないでしょ。まだ十時半だよ?それに……恵になんて説明するの?」

裕子の顔がさらに曇った。裕子は、ほぼ初対面の男に言い寄られたことがイヤなのではなく、その男が自分の友人の彼氏だということに困惑しているのだろう。私は、裕子の小動物のように潤んだ瞳をしっかりと見つめながら提案した。

「そうだな。じゃあ、もう少しだけそのまま打ってみてさ、それでもずっと話しかけてくるようだったら……」

そこまで言ったところで、裕子の視線が私の背後へと移り、その表情が僅かに強張ったのがわかった。私が振り返ると、自動販売機の前に大きな影が立っていた。大神田さんだった。突然のことに私は驚き、思わず身体が震えた。それを見て大神田さんは柔らかく笑い、

「すみません、驚かせてしまいましたか。このお店の自動販売機はカフェオレが無いんですね。スロットを打つときはいつもカフェオレと決めているんですけど……」

そう言って、大神田さんは自動販売機に小銭を入れ、ボタンを押した。出てきたペットボトルを手に取り、大神田さんはこちらに軽く会釈をし、休憩スペースから去っていった。その一連の行動に、得も言われぬ気味の悪さを感じた。

「正吾……」

振り返ると、裕子が眉をハの字に曲げていた。

「打つ台、交換しよ。アタシ、今日ジャグラー打ちたい……」

私は二三度頷きながら、サラリーマン金太郎のリプレイハズシの手順を脳内のデータベースからロードした。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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