六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編19】「取りこぼしてますよ」

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「打つ台、変わったんですか?」

私がサラリーマン金太郎のカド台に座って遊戯を始めると、隣の大神田さんが早速話しかけてきた。

「裕子は目押しが上手くないから、こういう長いATを引いたときは交代するんですよ。その方が時間効率がいいですからね」

私はでまかせで取り繕った。それを聞いた大神田さんは、わざとらしく口を尖らせて、大きく横に首を曲げた。

「裕子さん……じゃなくって、森さん。そんなに目押し下手でしたっけ?隣で見てましたけど、リプレイハズシもキチンとできてましたよ?」

その言葉が終わるのを待たず、私は左手に持っていた十枚ほどのコインを下皿へと放り投げた。私は多少のことでは怒ったり腹を立てたりしない性格だと自認しているが、今はハッキリと顔が熱くなっているのがわかる。なぜ、ほぼ初対面のあなたに『裕子さん』などと呼ばれなければならないのか。なれなれしいにもほどがある。私は大きく息をついて、大神田さんを睨みつけた。

「相対的な問題ですよ。大神田さんから見たら裕子は上手く見えるかもしれませんけど、それより僕のほうが上手いんです。だったら、僕が打ったほうが効率いいでしょ?わかります?」

私は皮肉たっぷりに言い放った。自分でも驚くくらいに興奮している。同時に、大神田さんに対する敵意が大きくなるのを止められずにいた。

私は興奮を落ち着けるように下皿からコインをゆっくりと掴み直し、息を整えてからレバーを叩いた。すると、液晶画面にヒョウ柄の女性が現れた。ポンポンっとストップボタンを押すと、何も揃っていない。思わず手を止めた。普段はAT機をほとんど打たないので自信は無いが、これはボーナスかAT当選で間違いないはずだ。だが、私が勢い込んでレバーを叩こうとした瞬間、隣から腹立たしい男の手が伸びてきた。

「中リールでハッピ取りこぼしてますよ」

大神田さんはニヤニヤと笑いながら、中リールをトントンと叩いた。私はその手を払いのけるように、レバーを強く叩いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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