六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編20】どうせ低設定ですよ

←BACK【乗打編19】「取りこぼしてますよ」

「そろそろ食事休憩行かない?」

大神田さんがいる方とは逆側から、裕子が顔を出した。裕子の隣には阿久津さんの顔もある。携帯を開くと、もう午後一時を過ぎていた。精神的にピリピリしたまま遊戯していたので、空腹にも気がつかなかったようだ。結局この二時間半で私と大神田さんが交わした会話は、片手で数えられるほどしかなかった。

私たちは店員に食事休憩を取る旨を伝え、近所の定食屋へ向かった。定食屋に入り四人がけのテーブル席に座ると、それぞれ思い思いの定食を注文した。

「恵はどうなの?出てる?」

メニューを片付けながら大神田さんが尋ねると、

「結構プラスになってるよ。投資も少なかったしね」

と、阿久津さんは笑顔で答えた。それを聞いた裕子が私の肩を叩き、

「恵ね、目押し超上手いんだよ!後ろで見てたんだけどさ、ビタ押し全然ミスらないの!もうビックリしちゃった!」

目を丸くする裕子に、阿久津さんは顔の前で手刀を振った。やはり阿久津さんはかなりの腕前だったようだ。

「正吾はどうなのよ?アタシのヒキ、無駄にしてないでしょうね。千五百枚くらいある?」

裕子が私の顔を覗きこんできた。

「俺は一箱と下皿にもあるから、二千枚弱くらいはあるんじゃないかな?この店のドル箱、大きいからね」

そういうと、阿久津さんが音の出ない拍手を送ってくれた。といっても、最初に裕子が引いたATが伸びただけで、私はほとんど現状維持していただけなのだが。

「大神田さんはチャラくらいですか?」

私は正面に座る大神田さんに話を振った。

「そうですね、ちょっとプラスくらいじゃないですかね。あの台、ヤメようかなと思ってるんですけど……どう思います?」

大神田さんは、腰に手を当てて背筋を伸ばし、私を見下ろすように尋ねてきた。

「どうでしょうね。ヤメた方がいいんじゃないですか?どうせ低設定ですよ」

私は目も合わせずに、ぶっきらぼうに答えた。

→NEXT【乗打編21】白々しい笑顔

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

3月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

戻る