六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編21】白々しい笑顔

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実のところ、大神田さんの台が低設定であるという根拠は特に無かった。だが、今朝の裕子に対する言動と、どことなく私を見下しているような態度に、私は大人の対応をすることができなかった。しかし、そんな私の子供じみた物言いに、三人の空気が一瞬固まったのがわかった。私は慌てて、

「あ……いや、コンチ4Xとかいいんじゃないですか?まだ高設定台埋もれてるかもしれませんよ」

などと、またしても根拠の無い立ち回りを勧めてしまった。私はいたたまれなくなり、お冷に口をつけながら隣の裕子へと視線を送った。

「あ、うん。コンチいいんじゃないかな?まだ空き台あったみたいだし」

裕子は正面に座る阿久津さんの方を向いて言った。それを受けて、阿久津さんは隣に座る大神田さんの顔を見上げて、

「移動する?」

と尋ねた。すると大神田さんは、朝の並びの時に見せたような笑顔で私に言った。

「そうですね、戻ったら移動しようかな」

今朝は爽やかに見えたはずのその笑顔も、今では白々しく思えてしまう。これは、私の器量が小さいだけなのだろうか。大神田さんの隣で笑う、何も知らない阿久津さんの顔を見ていると、私は少し胸が苦しくなった。

「はい!お待たせ!からあげ定食のお客さん!」

張りのある店員の声に、私は小さく手を挙げた。揚げたてのからあげに勢い良くかぶりつくと、中から熱々の肉汁と油が飛び出し、私の上顎の皮を薄く削り取っていった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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