六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編22】移動しろよ……

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食事休憩を終えて店へ戻ると、裕子はジャグラーのシマへ、阿久津さんは大花火のシマへと消えていった。私と大神田さんは三十分前と同じようにサラリーマン金太郎のカドとカド2へと並んで座った。

「移動しないんですか?」

私はすかさず大神田さんに促した。

「うーん、ノマれてからでいいかな。それとも移動して欲しい?」

「いや、別にそういうわけじゃないですけど……」

私がそこまで言うと、大神田さんは自分の台のデータ表示機をじっと見つめた後、こちらに顔を向けて白い歯を見せた。

「じゃあ、ジャグラーに移動しようかな」

私はレバーを叩いたところで動きを止めた。目の前でリールが回り続けているが、焦点はそこには無かった。この男は一体どういうつもりなのか。私と裕子をからかって遊んでいるのだろうか。それにしては趣味が悪すぎるし、そもそも、裕子が阿久津さんに告げ口したらどうするつもりなのか。それとも、ただ単に性格が悪いだけなのか。私の頭は、目の前のリールのようにグルグルと回った。

「裕子さんとは付き合ってどれくらいになるんですか?」

私が左リールにチェリーを目押しすると同時に、隣から声が聞こえた。この男、遂に『森さん』と言い直すことすらしなくなった。間違いなくワザとだ。

「もう四年くらいになるんじゃないですかね。僕らの年齢からすれば長いほうでしょ?」

私はかなりサバを読んで答えた。実際には一年ちょっとだ。大神田さんは「へー」と興味が無さそうに返答してから、こちらに身体を傾けてきた。

「裕子さんって……かわいいですよね」

だったらなんだ?私は何も答えず、リールだけを見つめて淡々と遊戯を続けた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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