六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編23】まだ現金投資してんの?

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「ノマれたことだし、移動します」

大神田さんが私の耳元で言った。私はすかさず背後のシマを指差し、

「コンチのあの台、いいと思いますよ。多分高設定ですよ」

私は全く根拠の無いアドバイスをした。大神田さんは私が差した先にある台を一瞥すると、

「そうですか。とりあえず、恵の顔見てきます」

そう言い残し、サラリーマン金太郎のシマから消えていった。私はすぐに席を立ち、裕子のいるジャグラーのシマへと急いだ。裕子は、朝イチで私が座っていたカド2の台にいた。ちょうどコインサンドに千円札を入れているところだった。

「まだ現金投資してんの?」

私は裕子の肩に手を乗せて、データ表示機を見た。お世辞にも高設定とは言えない、むしろどう考えても低設定だろうといった数字が並んでいる。裕子は浮かない顔でこちらを黙って見た。

「移動すれば?この台ダメでしょ。まぁ俺が選んだ台だけどさ。AT機は良さそうな台無いけど、ジャグラーなら向こう側にもっとマシな台が……」

そこまで言うと、裕子は私の耳元に顔を近づけた。

「ここでいい」

「いいの?このまま打ってたら結構負けるよ?」

「そうじゃなくて……ほら」

裕子は人差し指を立てて、小さく左右に振った。私が何のことか理解できずに首を傾げると、裕子は私の耳元に手を当てて、

「隣に人がいるところで打ちたいの」

裕子は無表情のまま、眉を少しだけ上げた。裕子の両隣には、この店の常連客が座って遊戯していた。私はようやく裕子の考えていることを理解した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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