六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編24】「この台で大丈夫ですかね?」

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「わかった。とりあえずゆっくり打ってなよ」

「うん」

裕子は台に向き直ってコインを投入した。私はジャグラーのシマを見渡して、しばらく考えた。確かに隣が空いてる台に移動したのでは、隣に『あの男』が座ってくる可能性が高い。頭を掻き、自席へと戻ろうとした時、ふとあることを思いつき、裕子の肩を叩いた。

「俺の隣の台で打つ?今、大神田さんヤメたし」

何のことはない。私の隣で打っていれば、変な虫が飛んできても払いのけてやれる。裕子もこれは良いアイデアだと思ってくれたのか、口を丸くして眉を上げたが、すぐに表情を戻した。

「ダメだよ。さっきご飯食べてるときに正吾が『大神田さんの台、低設定ですよ』って言っちゃったじゃん。その台にアタシが座るのってちょっと不自然じゃない?」

私は手を額にあてて天を仰いだ。特に根拠も無いのに他人の台を低設定だなんて言うものではない。私は、昼間の自分が発した浅はかな言葉を悔いた。仕方なく私は裕子にそのまま打つように伝え、サラリーマン金太郎のシマへと戻った。

自席へと戻ると、ちょうど大神田さんと鉢合わせた。

「コンチに移動することにしました。恵が結構プラスみたいなんで、甘えさせてもらうことにしました。最近いつもこうなんですよね」

大神田さんは肩をすくめた。

「いいんじゃないですか。コンチならまだ高設定あると思いますよ」

私はまたしても根拠のない言葉で、大神田さんが早くコンチに座るように促した。大神田さんは、コンチ4Xのシマの中で最もゲーム数の少ない台の下皿に携帯電話を放り込んだ。

「この台で大丈夫ですかね?」

「いいと思いますよ」

「コンチ、あまり打ったことないんですよね。もし分からなかったら質問させてもらいますね」

「いいですよ。まぁ僕もあまり詳しくないんですけどね」

私は頬をさすりながら言った。すると、大神田さんはニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべ、私を見下ろした。

「そうですか。裕子さんの隣が空いてればよかったんですけどね……」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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