六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編29】先に帰るね……

←BACK【乗打編28】『設定5』じゃんかよ!
私は下皿に残った少量のコインをドル箱に詰め込んで、店員へ手渡した。ガサッという音と共に、ジェットカウンターが勢いよく回り始める。勝ちを確信している時に聞くジェットカウンターの音は実に心地良い。液晶画面の数字が小気味良く上がっていく。

1300……1400……もうチョイ、キリのいいところまで。心の中でそう願っていると、1525で数字が止まった。店員からレシートを受け取り、私と裕子は大花火のシマへと向かった。満席の大花火のシマのちょうど真ん中で、膝の上にドル箱を置いて遊戯する阿久津さんの姿が見えた。

「恵!」

裕子が声をかけると、阿久津さんは少し肩を上げて驚いたような仕草をした。だが、声の主が裕子であることがわかると、パッと表情が緩んだ。

「ゴメン。アタシたち、先に帰るね」

裕子は、阿久津さんの頬にキスをするかと思うくらいに顔を近づけて言った。阿久津さんは小さく頷いてから、裕子に何やら耳打ちした。それを受けて、裕子は何度も頷いた。

「うん、また今度行こ!メールするから」

二人のやりとりを微笑ましく見守っていると、通路の向こう側から大きな影が迫って来るのが見えた。店内の照明でちょうど逆光になって顔がよく見えないが、その風貌は間違いなくあの男のものだった。

→NEXT【乗打編30】焼肉は?

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

8月≫
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

戻る