六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編30】焼肉は?

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「二人とも、もう帰っちゃうんですか?」

その男――大神田さんは、裕子の目をしっかりと見据えて言った。まるで隣に立っている私が見えていないかのように、一瞥する様子すら無い。私は当てつけがましく裕子の肩に手を置いて、大神田さんを睨みつけた。

「用があるんでもう帰ることにしました」

そう言われて初めて私の存在に気がついたような素振りで、大神田さんは訝しげにこちらを見た。

「みんなでご飯食べるじゃなかったんですか?」

「そのつもりだったんですけど、それはまた今度にしましょう。すみません」

「なんだぁ、焼肉楽しみにしてたのに」

「その焼肉屋なら、この店出て右に曲がってすぐありますよ。釣具屋の二階です。阿久津さんと二人で行ってきてください」

私は焼肉屋のある方角を指差した。大神田さんは呆れたように眉を上げた。裕子は黙って阿久津さんの台のデータ表示機を見ている。

「それじゃあ阿久津さん、今日はお疲れ様でした。僕も阿久津さんくらい目押しできるように練習しますね」

私は阿久津さんに親指を立てて宣言した。阿久津さんは手で口元を隠して笑った。

「じゃあね!またね!メールするからね!」

裕子は阿久津さんの肩をバンバンと二度叩いてから手を振った。裕子の真似をするように、大神田さんも私達に手を振ってきた。だが、私は軽く会釈だけして、裕子の手を引いて景品カウンターへと向かった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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