六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編33】チャラまでノマレたの?

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「早いなぁ」

裕子はそう呟いて携帯電話の画面に目をやった。女性のメールを打つスピードの速さには本当に驚愕する。小学生の頃、男子には理由も告げられずに女子だけが視聴覚室に集められたことがあったが、実はあの時にメールの早打ちの授業が行われていたのではないだろうか。

「えーっとね、恵が二千枚くらいプラスで、彼氏がほぼチャラくらいだったってさ。恵すごいねぇ、プロじゃん」

「ってことは一人あたり千枚のプラスか」

「そうだね。ノリ打ちって良いね」

「まぁそうだけど……」

私はテレビのリモコンを手に取り電源を入れようとしたところで、ふと阿久津さんの言葉が脳裏をよぎり、手を止めた。ベッドで仰向けになりながら顔の上でメールを打っている裕子へと視線を向けた。

「大神田さんがチャラ?」

裕子はメールを打つ手を止め、頭だけをこちらに向けた。

「うん、ほぼチャラだってよ」

「あの状況からチャラまでノマれたってこと?二箱以上持ってたんだよ」

「さぁ、よくわかんないけど。投資金額も結構嵩んでたんじゃないの?」

「いや、それは……」

大神田さんの動きを全てチェックしていたわけではないのであくまでも推測だが、最初に打っていたサラリーマン金太郎では、おそらく一万円も使っていないはずだ。その後、コンチ4Xに移動してすぐにATを引いたようだから、こちらでも投資金額はさほど嵩んでいないだろう。とはいえ、コンチ4Xをはじめとするいわゆる『爆裂AT機』は、出玉スピードの速さと引き換えに、コインを飲み込むスピードもまた尋常ではない。私と裕子が店を出た後に、持ちコインのほとんどをノマれてしまった可能性も否定はできない。

「それにしたって、チャラねぇ」

私はリモコンをテレビに向け、電源ボタンを押した。画面には、久米宏に促されてニュース原稿を読む渡辺真理の姿が映し出された。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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