六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編38】誰がためにスロを打つ

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四日後の朝八時三十分。私と裕子は石神井公園駅から西武池袋線に乗り、池袋を目指した。ピークは過ぎているとはいえ、車内は職場へと急ぐ通勤客でごった返していた。

「うかない顔ですね、裕子さん。そんなにイヤ?」

裕子はつり革を両手でつかみ、肘のあたりにだらしなく顔を乗せている。

「別にぃ、イヤじゃないですけどぉ。恵に会えるしぃ」

裕子は口を尖らせた。今日は、勝った負けたを楽しむいつものスロットとは目的が異なる。それを考えると、私も少しだけ緊張した。裕子は昨夜まで何度も「恵には会いたいけど、あの男はイヤだ」と繰り返していた。私はそんな裕子を「友達のためだよ」といって説き伏せた。だが、これから私たちがやろうとしていることは、果たして本当に友達のためになる行為なのだろうか。私は自分の中でくすぶる疑問に蓋をした。

電車は江古田駅を通過した。車窓には、映画「シャル・ウィ・ダンス」で出てきたダンス教室が見えた。それを指差して裕子に教えると、「ふーん」と生返事が返ってきた。

「さっきの話に戻るけど、なるべくコッソリやってね。下皿の左側にある灰皿使うといいよ」

「わかってる。でもなんか自信ないなぁ」

「まぁ気楽にやればいいよ。うまくいかなかったらヤメちゃってもいいしさ」

裕子は伏し目がちに頷いた。電車は椎名町駅を過ぎ、大きく左へと曲がった。終点の池袋駅に着くと、一斉に乗客が降りる。私ははぐれないように、裕子の手をつかんだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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