六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編39】男の正体、暴く

←BACK【乗打編38】誰がためにスロを打つ

「おはよー。裕子、編み込みかわいいねー」

『スロットトヨタ』の並び列の最後尾で、阿久津さんと大神田さんが待っていた。阿久津さんは裕子の顔を見ると、すぐにそのヘアスタイルを褒めた。裕子は自分の髪をそっと撫でながら、照れたように「ありがと」と答えた。私は裕子のヘアスタイルがいつもと違うことに気がついてはいたものの、特に何の感想も伝えていなかったことを申し訳なく思った。

私は阿久津さんに「どうも」と小さく会釈をした。阿久津さんは「おはようございます」と『スター』の笑顔で返してくれた。そして、私は阿久津さんの後ろに立つ男へと目をやった。すると、その男は私と目が合ったことを確認してから、わざとらしく目をそらし、

「編み込み、かわいいですね」

と、満面の笑みで裕子にいった。裕子は突然のことに顔を強ばらせ、「あ、はい」とだけ答えた。

「大神田さん……おはようござます」

私は大神田さんの目をしっかりと見据えながら、ゆっくりとした口調で挨拶した。

「あ、あぁ。おはようございます」

私の口調から何かを察知したのか、大神田さんは僅かに狼狽した様子で言った。私はもう一度この四人でスロットを打とうと提案したことを少しだけ後悔した。やはり、この男にはもう近づかない方がよかったかもしれない。だが、それでは裕子が阿久津さんと会うこともままならない。やはり、この男の正体を暴くしかない。私は思いを新たにし、裕子とアイコンタクトを取った。裕子は私の手を強く握り返した。

→NEXT【乗打編40】ジャグラーしか打たないのかと

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

4月≫
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

戻る