六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編42】ぼっちの背後で大花火

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タイムクロスのシマに先客はいなかった。これはいつものことだ。朝イチからスペックの低いノーマルタイプを打つ奇特な客は、私くらいなものだ。スペックが低いといっても、普段打っているジャグラーよりは高いのだが。私はタイムクロスのシマをじっくりと眺め、そのうちの一台へと腰を下ろした。

タイムクロスの背後には、大花火が並んでいる。こちらは当然のように、朝イチからほぼ満席状態だ。ちょうど私が座った台の真後ろの隣、要するに斜め後ろの台に阿久津さんの姿があった。

阿久津さんはバッグから財布だけを取り出し、下皿へ静かに置いた。そして、台上にバッグを乗せようと立ち上がったとき、ちょうど私と目が合った。阿久津さんは少し驚いたような表情をしてから、笑顔で会釈をしてくれた。私も自分にできる最高の笑顔を作って会釈を返した。

私は、裕子が適当な台を確保できたかどうかを確かめに行きたかったが、今日は裕子を信じることにした。私は最初の千円札をコインサンドに投入した。勢い良くコインが吐き出され、乾いた金属音が鼓膜をくすぐる。朝十時に聞くこの音は、スロッターの気分を否が応でも高揚させてくれる。

五十枚のコインを下皿に移し終えると、私はその中から一枚のコインを掴みとった。ふと背後を見ると、阿久津さんはすでに遊戯を開始していた。

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長崎 正吾

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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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