六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編50】触んなよ!

←BACK【乗打編49】果たして、初手の正解は
「何回も?なんて?」

私は声を潜めて裕子の腕を小突いた。裕子はこちらに視線を合わせずに続けた。

「別に大したことないけどね。調子どうですか、とかそんな感じ。そんなことよりさ……」

――ヘイッ!中トロとサバ、お待ちぃ!

人一人通るのがやっとの狭いカウンターの中から、職人さんの腕がグイと伸びてきた。裕子はその皿を受け取ると、無言で私の方に中トロを差し出した。

「そんなことより何なの?」

私は中トロを箸で倒してからつまみ上げ、ネタの部分に醤油をつけて頬張った。安い回転寿司とはいえ、これだけ客が入っているだけのことはある。十分に満足できるクオリティだ。私が味を保証するように裕子に頷いて見せると、裕子は静かに口を開いた。

「話しかけるたびにさ、肩とか触ってくるのが……ね。あと、あのネットリとした視線が……」

裕子は中トロのシャリに醤油をつけ、カウンターで顔を隠すような格好で口へ運んだ。じっくりと味わうように咀嚼して、顎の動きに合わせるように頷く裕子を見て、私はまた後悔した。

「そっか……。わかった、もう大丈夫だろうから、台移動してもいいよ。何だったら俺の台と変わろうか?」

私が訊くと、裕子はサバに箸をつけながら、無言で首を振った。

「いい。っていうか、たぶんもう大丈夫。さっき食事休憩の直前にさ、肩に手乗せられたとき結構ハデに振り払ったから。ビックリしてたよ」

そう言って裕子はサバを口に放り込み、親指を立てた。向かいのカウンターには、仲睦まじい二人が見えた。私は、今日の『作戦』がうまくいってくれることを、強く願った。

→NEXT【乗打編51】コイン流すときに……

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

11月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

戻る