六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編51】コイン流すときに……

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「十九時くらいに切り上げて、今度こそ四人で食事しませんか?」

回転寿司屋で会計を済ませて店の外へ出ると、大神田さんが振り返って言った。

「そうですね。こないだはすみませんでした、先に帰っちゃって」

私は了承しつつ、前回の件を謝罪した。

「いえ、別にいいんですよ。僕と恵もやめるにやめられない状況でしたからね」

「今日はキリのいいところで全員引き上げましょう。そういえば、焼肉どうでした?美味しかったですか?」

私が尋ねると、阿久津さんが「はい、すごく」と答えた。となりで大神田さんも無言で親指を立てている。やはりあの焼肉屋は誰に紹介しても恥ずかしくない店だ。といっても、自分の店といわけでもないのだが。

『スロットトヨタ』の前に戻ると、私は裕子の肩を叩いた。阿久津さんと大神田さんもそれに気がつき、足を止めようとしたが、私は手のひらを上に向け、先に店に入るよう二人を促した。それを見て阿久津さんは裕子に小さく手を振り、大神田さんの肘のあたりをそっと触れてから店の中へと消えていった。

「何?」

裕子が不安そうな顔で覗きこんできた。

「コイン流すとき……。コインジェットで枚数確認して欲しいんだけど……大丈夫?」

私は小首を傾げて尋ねた。

「大丈夫、任せて」

裕子は口角を上げた。だが、その目は笑っていなかった。

「ゴメンね、こんなことやろうなんて言い出して」

私が頭を掻いてそう言うと、裕子は私の左胸を軽く叩いた。

「謝んないでよ。アタシも最初はイヤだったけどさ……」

裕子は店内をチラリと覗き込んだ。私もその視線の先を追いかけたが、二人の姿はすでに見えなかった。

「でも、恵のためになるかもって、今は思ってる。ちょっと複雑だけど」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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