六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編54】『お・は・だ』が大事ですよぉ!

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私が裕子に近づこうと通路を歩き始めると、大神田さんが席を立つ姿が見えた。私は慌てて歩みを早めたが、ちょうど店長がこちらに歩いてきたので、狭い通路でお見合い状態になってしまった。

「すみません、チョット……」

私は、店長の少し出始めた腹を手の甲で押すようにして、なんとか狭い通路をすれ違った。

「店内ではぁ!『押さない』『走らない』『台パンしない』のぉ!『お・は・だ』が大事ですよぉ!」

私とすれ違った店長が、マイクを通して言った。私は一瞬だけ振り返り、頭を下げた。それにしても、そのフレーズ。今、この瞬間に思いついたアドリブなのだろうか。もしそうだとしたら、この店長はやはりタダモノではない。

そんな愚にもつかないことを考えながら、裕子のもとへたどり着いた。傍らには大神田さんが立っている。どうやら肩に手は乗せていないようだ。

私に気がつくと、大神田さんは眉をハの字にして、裕子の台に刺された札を指差した。大神田さんの動作で気がついたのか、裕子も私の方を振り返った。その顔には困惑の色が見て取れた。

「すごいですね、『5』ですって」

大神田さんが私の顔を見て言った。私はそれに答えずに、裕子の肩に手を乗せた。裕子はその手を無言で握り返してきた。それを見て、大神田さんの顔が僅かに曇ったように見えた。

「やるじゃん、サラ金の『5』なんて、勝ち確定みたいなもんじゃん。さすが、引きだけは強いねぇ」

私がそう言うと、裕子は握っていた私の手をパチンと軽く叩いた。裕子は私の手をもう一度握り、顔を近づけてきた。

「ねぇ……どうすればいいの?ヤメられなくなっちゃったよ?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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