六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編55】懐かしい、その声

←BACK【乗打編54】『お・は・だ』が大事ですよぉ!

「どうするか考えるから、もう少しそのまま打ってて」

私が伝えると、裕子は口を真一文字に閉じて頷いた。

「今日もご飯、行けないんですか?」

大神田さんが不満そうな顔で私に言ってきた。私としては、大神田さんと食事ができなくても一向に構わないし、裕子がこのままサラ金の設定5を打ち続けてくれることに何の不満もない。だが、それではここまでの苦労が水の泡になってしまう。なんとしても、四人揃って収支を報告し合いたいのだ。

「いや、せっかくだから四人で食事したいですよね。とりあえず、大神田さんはコンチ打っててくださいよ。どうするかは僕が考えますから」

私は大神田さんの両肩を背後から少し強引に掴んで、席へと座らせた。年下にこんな態度を取られて気分が良いはずもない。椅子に座った大神田さんは、冷たい目で私を睨んできた。私はそれに気がつかないフリをして、軽く会釈をしてその場を離れた。

私は意味もなく、店内の全てのシマを練り歩いた。何か良いアイデアはないだろうか。あと三十分で当初予定していた終了時刻――十九時になる。時間が多少前後することは問題ないが、そもそも裕子が今座っている設定5のサラ金をヤメるというのが、あまりにも不自然過ぎる。あの二人だって、そのまま打ち続けるべきだと言うはずだ。

私は景品カウンターの前を通り過ぎ、休憩スペースに入った。喉が湧いていたわけでもないが、手持ち無沙汰だったので、なんとなく自販機で緑茶を買った。蓋を開け、一口喉に流し込んだとき、背後から声が聞こえた。

「彼女さん、サラ金の『5』掴んどったなぁ!相変わらずやるのぉ!」

→NEXT【乗打編56】「高垣さんじゃないですか!」

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

7月≫
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

戻る