六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編56】「高垣さんじゃないですか!」

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声がする方を振り返ると、私は思わず息を呑んだ。そこには、屈託のない笑顔を浮かべる中年サラリーマンがいた。白いワイシャツの首元には、真っ赤なネクタイが大きすぎるウインザーノットで結ばれていた。

「高垣さんじゃないですか!」

「おう、久しぶりやなぁ!」

「お久しぶりです!こっちに戻ってきたんですか?」

「東京出張や!」

高垣さんはカラカラと笑った。私も久しぶりの再会に気分が高揚した。

「今朝、東京来てな。そんでさっき仕事終わったからココ覗いてみたんよ。そしたら見覚えのある後ろ姿の奴がおるなー思ってな」

高垣さんは私の肩を何度も叩いた。以前会った時よりも、少しだけ恰幅が良くなっているような気がした。

「そうなんですか。元気そうで何よりです。向こうでもスロット打ってるんですか?」

「そら打っとるよ。でもアカンな。東京の方がエエ店多いわ。この店とかな」

高垣さんは人差し指を床に向けて言った。

「サラ金の『5』に座っとったの、彼女さんやろ?」

「そうです、会ったことありましたっけ?」

「ここで挨拶だけしたやろ。そんときに顔合わせたわ。人の顔覚えんのは得意やからな。こう見えても『営業部長』や」

そう言って、高垣さんは豪快に笑った。おそらく、大阪に戻ってから部長に昇進したのだろう。そんな口ぶりだった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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