六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編59】『時速5000枚』ですから

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「なんでや?彼女さんの台やろ?ヤメんの?」

高垣さんは眉を大きく上げて尋ねた。

「実は今日、四人で打ちに来てるんです。それで、十七時くらいから食事に行こうって言ってたんですよ。で、そろそろヤメようかと思ってたら、裕子の台に『5』の札が刺されちゃって……。だから困ってたところだったんです。な?」

私は裕子の顔を見た。裕子は目と口を丸くしていた。おそらく、良いアイデアだと思いつつも、知らないおじさんにサラ金の設定『5』を譲るということに納得がいっていないのだろう。

「彼女さん、ビックリしてるやん。ホンマにええの?」

高垣さんは裕子を一瞬だけ指さして、その手を額に当てた。指を差された裕子は驚いて私の顔を見上げた。

「いいよね?」

私は裕子の背中を軽く叩いた。裕子は私の肘をグイと引っ張って、私の耳元に顔を近づけてきた。

「それは別にいいけどさ、この人ダレだっけ?」

裕子の小さな声が鼓膜をくすぐった。やはり高垣さんが誰なのかを思い出していないようだ。私は手のひらを裕子の耳元にあてた。

「色弱で、ジャグラーのGOGO!ランプを覗きこんでた人って言えば思い出す?」

裕子は手を口にあてて、大きく二度頷いた。やっと高垣さんのことを思い出したようだ。

「結局どうすんの?打っていいなら打つで」

私たちのヒソヒソ話を眺めていた高垣さんが催促してきた。

「はい、お願いします。是非この時間から万枚目指してください」

「そら無理やろ、いくらなんでも」

「サラ金なら無い話じゃないですよ。なにせ時速5000枚ですから」

私がそう言うと、高垣さんは大きく笑った。十七時からの万枚など、現実的には厳しいが、『時速5000枚』を公式に謳うサラリーマン金太郎ならば、決して不可能な数字ではない。私たちは休憩スペースを出て、サラ金のシマへと向かった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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