六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編62】回れ回れ、コインジェット

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コインジェットの前で待っていた大神田さんが、私の顔を見るなり眉をひそめた。

「長崎さん、コイン流さないんですか?」

「いや、阿久津さんが何枚くらいだったのか気になったんで……」

大神田さんは阿久津さんのドル箱を受け取ると、「ふーん」と露骨に不信感をあらわにした。確かに私の行動はなんとも不自然だ。さっさと自分の台を整理してコインを流せよと思われても仕方がない。私が所在なげにコインジェットの回りをウロウロしていると、サラ金のシマからドル箱を持った救世主――裕子が現れた。私はすぐに裕子に耳打ちした。

「阿久津さんの枚数、チェックしといて」

「なんで?」

「いや、なんとなく。大神田さんのはチェックしたから……ついでに」

裕子は眉を片方だけ下げた。私は裕子の肩を叩いて「よろしく」と右手を上げ、タイムクロスのシマへと向かった。

自席に戻ると、私は台上のドル箱を膝の間に挟み、下皿のコインを全て移した。最後に、下皿の左側にある灰皿を半回転させた。ガシャという重たい音と共に、手のひらにコインが落ちる。そのコインを全て台に投入して、最後のレバーを叩いた。念のため7を狙うが、当然のように1コマズレて停止した。私は『22』の表示を確認してから、クレジットを全て落とした。

ドル箱を持ってシマの端まで行くと、裕子が出迎えてくれた。

「いちにーろくぜろ」

それだけ言うと、裕子は黙って私を見上げた。私は「ありがとう」と伝え、二人が待つコインジェットへと向かった。

「2000枚くらいありそうですね」

大神田さんの言葉に、私は軽く会釈した。コインジェットが回り始め、徐々にコインの嵩が減っていく。それと反比例するように上昇する枚数カウンターをぼんやりと眺めながら、私は思った。

今日の目的は全て達成した。あとは……彼ら次第だ。

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  • 端数24枚とか……勘弁してください。端数24枚とか……勘弁してください。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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