六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編63】池袋メシは、玉石混交

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店を出ると、外はすっかり夜の帳が下りていた。店の前にある風俗案内所からスーツ姿の男が顔を隠しながら出てきた。この街の、夜の日常風景だ。

「どこにしましょうか?」

大神田さんが、誰ともなく尋ねた。

「こないだ、あの焼肉屋には行ったんですよね?釣具屋の二階にある……」

「はい、行きました。すっごく美味しかったです」

私の問いに、阿久津さんが笑顔で答えた。

「あの焼肉屋、美味しいよねぇ。アタシも正吾としょっちゅう行ってるよ」

裕子は阿久津さんに腕を絡めながら笑った。

「じゃあ、焼肉ばかりっていうのもなんだし……昼に寿司食べたし……」

私がどの店にするか悩んでいると、裕子が私の肩を叩いた。

「『とり勝』は?」

「あー『とり勝』かぁ。いいね、そうしようか」

私は、大神田さんと阿久津さんの背後を指差した。

「向こうの通りを歩いたとこに、『とり勝』っていう居酒屋があるんですけど、そこにしましょう。焼き鳥が美味しいんですよ。個室になってていい雰囲気なんです」

二人は、私の指差す方にチラリと視線をやると、顔を見合わせてから頷いた。

「じゃあ、決まりですね」

私が目で合図を送ると、裕子は私の手を握ってきた。私はその手を握り返して、夜の池袋を歩きはじめた。昼に食べた回転寿司屋の前を通り過ぎ、ラーメン屋の角を曲がったところで、うしろの二人に目をやった。そこには、ズボンのポケットに両手を入れた大神田さんと、その肘のあたりをそっと掴む阿久津さんの姿があった。

視線を正面に戻すと、裕子が無言で私の顔を見上げてきた。私には、裕子が何を伝えようとしているのかが手に取るように分かった。

私はうしろの二人の動きを気にしながら、いつ話を切り出そうかと考えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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