六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編66】男、豹変ス。

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その瞳は潤み、唇は小刻みに震えていた。大切な友人を守るため、小さな身体から精一杯の勇気を振り絞っているようだった。裕子の口から突然飛び出した言葉に、大神田さんと阿久津さんは固まってしまっている。

「嘘……嘘だよ!おかしいよね、正吾?」

裕子は助けを求めるように私の顔を覗きこんできた。その時、まばたきした瞳からこぼれ落ちた涙が、ほうき星のように頬を伝った。

「な……何?どういうこと?裕子」

ただならぬ雰囲気を察して、阿久津さんがおそるおそる尋ねてきた。裕子は阿久津さんの顔を見て一瞬、口を開こうとしたが、言い淀んで、私の服の背中あたりを掴んだ。裕子に背中を押された私は、努めて冷静に尋ねた。

「大神田さん。今日、何枚くらい流してましたっけ?」

大神田さんは首を鳴らしてから、ふざけるように肩をすくめた。

「あ!?枚数?さぁね。忘れたけど、1000枚チョイだったんじゃねーの?」

明らかに今までとは異なる口調に、四人の空気が張り詰める。阿久津さんが大神田さんの肘のあたりを掴んだ。大神田さんはそれを気にする様子もなく、ポケットに手を突っ込んだままこちらを蔑むような目で見下ろしている。その眼力に負けないように、私は目をそらさずに続けた。

「1211枚ですよ。コイン流した後に、レシート見せてくれましたよね。僕の顔の前にこんなふうに突き出して」

私は左腕を大神田さんの鼻先に突き出した。大神田さんは眉間にシワを寄せ、その手から顔を避けた。私は構わず続けた。

「で……チャラになったんでしたっけ?」

「そうだよ」

「ってことは、投資金額は……」

「知らねぇよ、二万チョイだろ。何か問題でも?」

大神田さんはその大きな身体を腰で折り曲げ、私の顎下から睨みつけてきた。私が顔を遠ざけると、隣から絞り出すような声が聞こえた。

「やっぱり……嘘じゃん」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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