六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編67】「はぁぁぁぁぁあ!?」

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「はぁ!?」

大神田さんが裕子を睨みつけた。裕子は僅かにひるんだが、私の背後に身体を半分だけ隠して、続けた。

「アタシ、数えてたんだもん。あんたの投資金額……」

その言葉で、大神田さんの眉は大きく上下に波打ち、口元が激しく歪んだ。

「はぁぁぁぁぁあ!?数えてたぁ!?」

「そうですよ。裕子にチェックするように頼んでたんですよ」

隣で裕子が何度も頷いた。

「あの店、台と台の間が鏡みたいになってたでしょ?だから斜め後ろの人が何してるのか、よく見えるんですよ。大神田さんも、裕子の後ろ姿がよく見えたんじゃないですか?」

私は皮肉たっぷりに言い放った。

「4000円ですよね、本当の投資額。それでチャラってことは無いんじゃないですか?」

そこまで言うと、大神田さんの顔から表情が消えた。その顔にはもはや、初めて会ったときの好青年の印象は微塵も残っていない。私は最悪の事態を想定して、裕子の手を握り直した。同時に、ここからの逃走ルートを脳内でシミュレーションした。

背後から、ガラガラとけたたましい音が聞こえた。おそらく、閉店時間を迎えた楽器屋のシャッターが降ろされる音だと思われるが、今は目の前の男から視線を外すことはできなかった。

実際には十秒にも満たない沈黙だったのだろうが、私には一時間にも二時間にも感じられた。そんな沈黙を破ったのは、意外にも、阿久津さんだった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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