六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編69】「まだ……嘘ついてますよね?」

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大神田さんは初めて会った時のような穏やかな笑顔で、阿久津さんの頭を優しく撫でた。

「勘違いしてた。二万使ったのって昨日だったね。恵、ゴメン」

撫でられた阿久津さんは、驚いたような呆れたような表情で大神田さんの顔を見つめている。裕子も唖然としている。

当初の目的を果たしたはずだったが、なぜか当事者の二人に完全否定されてしまった。予想外の展開に、私もしばし呆然となった。だが、ここまできてしまっては仕方がない。もはや、この後どうなってしまうのか想像もできなかったが、私は最後の一手を繰り出すことに決めた。

「……そうでしたか。すみませんでした。それならば勘違いなんでしょう」

「ちょっと正吾!そんなワケないじゃん!絶対オカシイよ!」

私が二人に謝罪すると、裕子が喰らいついてきた。私は裕子の手を引いて、制した。

「あー、なんか気分悪いからメシは遠慮するわ。恵、帰ろうぜ」

大神田さんは阿久津さんの腕を強引につかみ、駅の方へと身体を向けた。私は一瞬、このまま二人を帰した方が良いのかもしれないと思った。だが、隣にいる裕子の頬に残る一筋の跡が視界の端に入り、思い直した。

「待ってください!」

私は二人を呼び止めた。大神田さんは怪訝そうな表情で私の方を見返した。阿久津さんは不安そうな視線を裕子に送っている。

「なんだよ。まだなんかあんの?」

大神田さんが詰め寄ってきた。身長差がそのまま圧力になる。私は気圧されないように、精一杯胸を張った。しばらく黙ったまま、目線を絡めた。業を煮やした大神田さんが、眉間のシワを深くした。

「だからなんなんだよ!」

私は大神田さんから視線を外し、ゆっくりと正面を見据えた。

「まだ……嘘ついてますよね?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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