六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編70】「意味ワカンネ」

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「……え?」

私の視線の先にいた阿久津さんが、目を見開いた。通り過ぎるバスのテールランプが、阿久津さんの顔を赤く染める。車の波が途切れ、この街には似つかわしくない静寂が訪れた。

「正吾、何言ってんの?」

裕子が私の腕を揺さぶった。思わぬ展開に困惑しているのだろう。裕子には後で謝らなければと思いつつ、優しく腰に手を回した。

「意味ワカンネ。勘違いだって言ったろ?くだらねぇ。恵、行くぞ」

大神田さんがきびすを返した。だが、阿久津さんはそれについて行こうとしない。

「なんだよ、恵」

大神田さんが阿久津さんの腕をつかんだが、阿久津さんは私から視線を外そうとしない。その目は僅かに潤んでいるように見えた。私は阿久津さんの反応を確かめるように、少しずつ話し始めた。

「阿久津さん……。今日、何枚出してましたっけ?」

私は大神田さんのときと同じように、阿久津さんに尋ねた。阿久津さんの下唇が僅かに震えたが、何も言わない。私は続けた。

「1260枚ですよね。裕子に見ててもらいましたから」

裕子はぽかんとした顔で立ち尽くしている。

「……で、投資額が5000円ってことですよね?それで大神田さんがチャラだと思ったから、二人合わせて1000枚のプラスだと。だから一人あたり500枚のプラスだと思ったんですよね?」

私が尋ねると、阿久津さんは静かにため息をつき、うなだれた。それが『悔恨』なのか『憤り』なのか、または『安堵』なのか。私には分からなかった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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