六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編73】和風パスタもどき

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私は寝ぐせのついた頭を掻きながらキッチンへと立った。冷蔵庫を開けてみるが、飲み物と調味料しか入っていない。次に、食料を保存している戸棚を開けてみると、パスタの乾麺が一人分だけ残っていた。

「なんだ、パスタあるじゃん」

「麺だけはね。ソースが何もないんだよ」

裕子がテレビに向かって答えた。なるほど。言われてみればパスタソースなどという気の利いたものが今の我が家にあるとは思えない。仕方なく私は、醤油とマヨネーズだけで『和風パスタもどき』を作ることにした。

番組が『いいとも』から『ごきげんよう』に変わった頃、パスタが茹で上がった。適当に醤油を絡め、皿の端にマヨネーズを添える。『和風パスタもどき』の完成だ。それを持ってリビングへと腰を下ろす。箸で『和風パスタもどき』を口に運ぶ。その瞬間、虚しさがこみ上げてきた。まったく美味しくない。

「……なんでこんな侘しい食事してんだろ。昨日も勝ったのに」

私の言葉に反応したのか、不意に裕子が携帯電話を開いた。だが、一瞬確認しただけで、すぐにそれを閉じた。

「恵からメールが返ってこない……」

裕子は無表情でテレビの方へ向き直った。

「……そっか」

私はそれだけ言うと、パサついたパスタを口へと運んだ。マヨネーズを絡めると余計に不味く感じた。

「何やってんだろうね、アタシたち……」

いつになく低く重い裕子の声が部屋の中に響いた。私は何と答えればよいのかわからず、黙ってパスタを食べ続けた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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