六本木ヒルズからの七転八倒

【乗打編75】知ってたんじゃないかな

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私は空になったペットボトルのキャップの部分を持ち、円を描くように軽く回した。

「お互いに知ってたんじゃないかと思うんだよね。投資金額をごまかしてたことをさ」

裕子はポカンと口を開けてこちらを見た。

「といっても、阿久津さんは過少申告してたわけだから『ごまかし』って言うと多少違和感があるけどね」

私が言うと、裕子はクッションに顔を突っ伏して床にゴロリと寝転んだ。『ごきげんよう』がエンディングを迎える。相変わらず毒にも薬にもならない番組だ。

「恵……なんでそんなことしちゃったんだろ」

裕子がクッションから顔を半分だけ出してつぶやいた。私は「なんでだろうね」とだけ答えた。しばらく、二人の間に沈黙が流れた。テレビからは『手をつなぎたくなる~』という歌と共に、笑顔で手をつなぎスキップする老夫婦のCMが流れていた。きっとこの老夫婦ならば、ノリ打ちだってうまくいくに違いない。そんなことをぼんやりと考えていると、裕子がおもむろに身体を起こした。

「やっぱりアノ男、最悪じゃん!自分は投資金額ごまかしておいて、恵のこと気がついてるのに知らんぷりしてたってことでしょ!最低!」

そう言いながら、裕子は二三度クッションにパンチを浴びせた。私は黙って頷いた。ノリ打ちに必要なものは『信頼関係』だ。その信頼関係が歪んでしまっていては、いつか必ず破綻する。仮に私たちが指摘しなかったとしても、いずれ二人の関係も破綻していただろう。私はそう思うことで、自分のしてしまった行動を正当化しようとした。

「恵……どうするんだろ」

クッションに馬乗りになりながら裕子はひとりごとのように言った。ちょうどその時、裕子の携帯電話からサンダーVの着メロが鳴り響いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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