六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編02】君は本当にスゴイな

麻雀卓を挟んで右隣の席に座った堀口は、マイルドセブンに火を付けて大きく吸い込んだ。その煙をフーっと吐き出した後、私の顔を下から覗き込むように見てニヤリと笑った。

「今朝、遅刻ギリギリだったじゃないっスか?」

「そうだったね。彼女の家から来たの?」

とりあえず話を合わせる。堀口は一人暮らしをしていると聞いていたが、3人いる彼女の家から出勤してくることも珍しくなかった。

「いや、彼女の家からだったらあんなギリギリにならないっスよ!」

彼女の家からの出勤は慣れたものだろうし、確かにそうだ。

「ここだけの話っスよ!実は昨日……」

キョロキョロと周りに人がいないことを確認してから、堀口は小声で話し始めた。

「俺の右隣に女の子が座ったじゃないっスか?」

「あぁ、なんか髪の長い人がいたよね」

「今朝、その子の家から来たんスよ!!」

……君は本当にスゴイな。畏怖の念すら抱くよ。言われてみれば、今朝の服装は昨日のそれと同じだったような気がする。仕事が休みの日にちょっとスロット屋に行っただけで、1000枚のコインと女の子をゲットしたというのか。なんとも羨ましい人生ではないか。

「堀口……すげぇなぁ。スロットにも勝ったうえに……ねぇ」

私は素直な感想を口にした。ただし『女の"子"』と呼ぶには少々年齢を重ね過ぎているのではないか?という疑問だけは飲み込んだ。

堀口は「聞いてくれればなんでも答えますよ?」といった感じで、ニヤニヤと私の顔を覗き込んだ。しかし、ここでその女性の話を聞くのはあまりにも下衆であるし、そもそも癪に障る。よって、女性の件は一切無視して話を進めることにした。

「ところで、今度の土曜日に休みが重なるでしょ?その日にまた『デルタ』に連れて行ってくれない?」

堀口は虚を突かれたようで、一瞬だけ眉がハの字になった。だが、すぐに気を取り直して話に乗ってきた。

「イイっスよ!もちろん!今度はもっと分かりやすい機種がイイっスね!」

私がクランキーコンドルについてイマイチ理解できていなかった事を察してか、初心者に優しい提案をしてくれた。こういう気遣いもできるのかと感心すると同時に、最初からそうしてくれよと思う気持ちもないわけではなかった。

次の土曜、我々は『スロット デルタ』を見下ろす場所にあるマクドナルドで朝食を取っていた。

私と堀口と、「千夏」と名乗る髪の長い女性の三人で、だ。

→NEXT「プチマーメイドっス!!」

  • 「ここだけの話っスよ!」「ここだけの話っスよ!」

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

4月≫
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

戻る