六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編04】ピンクの貝殻

時計の針が10時を指すと同時に、T-SQUAREの「TRUTH」が流れ始めた。

「店内では走らないようにお願いします!ゆっくりと歩いてご入店ください!」

前回聞いたそれとまったく同じ文言で、店員が声を上げる。私は、182cmのマッシュルーム頭に続いて店内になだれ込んだ。

入店するとすぐ、千夏さんは堀口と何やらアイコンタクトを取ってクランキーコンドルが設置してある二階へと早足で歩を進めた。

千夏さんの行動は、スロット屋というものにかなり慣れているように見えた。堀口の話では、千夏さんは初心者だったから教えてあげるうちに仲良くなったと言っていたのだが……。

「ここのシマっスね!!」

そんなことを考えているうちに、お目当ての機種にたどり着いた。
その機種は青を基調としており、パネルには「petite mermaid」という文字と共に、金髪の人魚の絵があしらわれていた。

「好きな台選んでいいッスよ!別に向こうのシマでもいいッスよ!同じようなもんッスから!!」

堀口の視線の先には、赤いパネルに「JUGGLER」と書かれた機種がズラリと並んでいた。そう言われると「JUGGLER」も多少気にはなったが、堀口が当初から指定していた方がなんとなく良い気がして、「プチマーメイド」の右角台に着席した。

「この台はッスねー、簡単ッスよ!!」

そう言いながら、私の左隣に堀口が座った。私は前回の記憶を呼び戻しながら、慎重に最初の千円札をコインサンドに滑りこませた。

「そういえば、機種の列を『シマ』っていうの?」

「そうッスね!そんな感じッス!!」

なるほど。こういった専門用語を知ると、その業界を深く知れた気がして少し気分が良いものだ。はやる気持ちを抑えつつ、3枚のコインを投入し、レバーを叩こうとした瞬間、堀口が私の台を指差した。

「この台はココだけ見てればオッケーっスよ!!」

堀口の指は、BETボタンの左上に描かれた「ピンクの貝殻」を指していた。

→NEXT【人魚編05】光れ……

  • ココが光るんスよ! (C)KITA DENSHIココが光るんスよ! (C)KITA DENSHI

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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