六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編05】光れ……

「入ったらココが光るんスよ!」

そう言いながら、堀口は「CHANCE」と書かれたピンクの貝殻をトントンと軽く2回叩いた。

なるほど。前回のクランキーコンドルのときはボーナスが揃う状態になったら堀口が教えてくれることになっていたが、これは台自体が教えてくれるいうことか。これは分かりやすいし、力の入れどころが明確で良い。初心者にやさしい台というのも頷ける。

だったら最初からこの機種でよかったじゃないか……などという多少の恨み節を飲み込んで、いよいよ実戦を開始する。慣れた手つきでゲームを消化していく堀口を横目に、私は自分のペースでゆっくりと1ゲーム1ゲーム味わうように消化する。

「光れ……」

レバーを叩く瞬間、左下のピンクの貝殻を凝視しながら小さな声を出してみた。当然のように光らない。これを見た堀口が、右の口角をクイっと上げて言った。

「レバー叩いた瞬間は光らないッスよ!右のストップボタンから指を離した瞬間に光るんスよ!!」

今日の堀口はアドバイスが的確ではないか。いつもこれくらい頼れる男だといいのだが。などと、なぜか上から目線で堀口の話に耳を傾ける。それならばと、3つのストップボタンを押すタイミングに合わせて

「ひっ……かっ……れっ……」

貝殻はくすんだピンク色のままだ。こんなに生気の無い貝殻の中に金髪の人魚がいるなど、誰が想像しようか。だが、よくよく考えたら、人魚に対して命令口調というのは良くない。そりゃあ人魚もヘソを曲げるというもの。次は右のストップボタンを離す瞬間にささやくように

「光ってください……」

むしろ最初より暗くなったような気さえした。私の貝殻だけ中身が入ってないのではないか?そんなイチャモンにも似た猜疑心にさいなまれながら、最初の千円が海の藻屑と消えた。

嫌な予感がする。前回の記憶が鮮やかに蘇ってきた。前回は十枚の千円札がコンドルの餌になってしまったが、今回は果たして……

二枚目の千円札がコインサンドに吸い込まれてから数分……私の予感は良い意味で裏切られた。

遂にその時が訪れた。

→NEXT【人魚編06】「ビッグっスよ!」

  • 私の予感は良い意味で裏切られた。私の予感は良い意味で裏切られた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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