六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編06】「ビッグっスよ!」

「光ってるッスよ!ホラ!長崎さんっ!!」

ほんの一瞬、気を抜いた瞬間の出来事だった。さっきまでくすんだピンク色をしていた貝殻が、まるで富士山頂から望む御来光のようにまばゆく照らされているではないか。

「お……おぉ、う……うわぁ!!」

あまりにも突然の出来事で、私は声にもならない声を上げ、無様にたじろいでしまった。よもや光るまいと思いながらも、光ってくれと強く願う。そんな諦めと希望の感情が、フッと途切れた刹那の出来事だった。

「これでビッグかレギュラーが入ったってことッス!じゃあお楽しみは最後にってことで、先にレギュラーから狙って……オレがやるからイイッスよ!!」

堀口はそう言って、私の下皿からコインを一枚だけ拾い上げ、コイン投入口へと入れた。そのまま私の台を覗きこむようにして、左リールからテンポよく「BAR」図柄を狙っていった。

するとどうしたことか、左・中リールまでは調子よく「BAR」図柄が中段に停止したのに、右リールだけ上段に停止してしまったではないか。

「おぉ!ビッグっスよ!」

ここまできたら素人の私でも理解できる。7が揃うということだな。遂にここまでこぎつけたか。前回から通算して12000円目にしての初のビッグボーナスだ。長かった……

などと感慨にふけっていると、堀口があらぬことを口走った。

「せっかくなんで自分で揃えまスか?大丈夫ッスよ!この人魚の金髪が一瞬キラっと光るの……わかりまスか?」

……堀口よ。前回から言っているように、私にはこの回転するリールが、長時間露光撮影された高速道路にしか見えないのだよ。そんな人間に人魚の金髪を見ろなど……一休さんに出てくる将軍様が出す無理難題と変わらないぞ?

「いや、堀口さぁ……金髪が光る瞬間なんて、素人の俺に……」

そこまで口にして、言葉に詰まった。堀口がタイミングを取ってリールを叩く指に合わせて、流れ星のように滑り落ちていく一瞬の光が見えたのだ。

「おぉ!なるほど、コレか!確かに一瞬だけキラっと光ってるね!見えるわ!スゲェな!」

絶対に出来ないと思っていたことが出来た。このときの感動は、初めて逆上がりができたときのそれとよく似ている。自分の能力が高まったことを実感できた瞬間は、何ものにも代え難い喜びを感じられるものだ。

「一度見えたら簡単ッスよ!リールの速度は同じッスから、金髪が見えた次の周で止めればいいんスよ!」

言っている意味も理解できるし、それを実現できそうな感触もある。こちとら一度は音楽の道を志した男だ。リズム感には自信がある。

「いいッスか!?いきまスよ!?」

『キラッ…キラッ…ハイッ!』
『キラッ…キラッ…ハイッ!』
『キラッ…キラッ…ハイッ!』

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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