六本木ヒルズからの七転八倒

【人魚編09】ものすごく損した気分だ

「またキタっスよ!ホラッ!」

「えっ!……うぉ!」

先ほどのビッグボーナスから僅か数分。パネル左下に鎮座する貝殻が、またしても美しいピンクの光を放った。不思議なもので、たったひとつのランプが点灯しただけで、パネル全体が明るくなったように感じる。これは私の精神状態がそう見せているだけなのだろうか。

「まずは1枚がけで金髪狙いッスね!」

堀口の言葉に促されて、私はベットボタンを一度だけ叩き、優しくレバーを押し下げた。そして、高速回転するリールを凝視し、一瞬だけキラリと光る人魚の金髪を探す。

「これか……よし、見える」

さきほどのビッグボーナスを自力で揃えられたことで、私はすっかり自信をつけていた。一度金髪が見えてしまえば後は簡単。心の中で「キラッ…キラッ…ハイッ!」と唱えながら、ストップボタンを押すだけだ。

だが、さっきは吸い込まれるように揃った金髪の人魚が、今度は一コマだけズレて止まってしまった。

「あー、レギュラーッスね」

眉をハの字にした堀口が、残念そうな口調で言った。

「レギュラーってどういうこと?」

「レギュラーはビッグの3分の1くらい……だから、だいたい130枚くらいしか出ないんスよ!こっちの『BAR』を狙うんスよ!」

そうなのか。ボーナスはビッグとレギュラーの2種類があって、レギュラーというのは「小当り」といったところか。貝殻が光るというイベントはビッグもレギュラーも同じなのに、なんだかものすごく損した気分になってしまうじゃないか。とはいえ、そういうものならば仕方がない。

「この『BAR』を狙えばいいワケだね?」

「そうッスね!」

念のため狙う図柄を確認してからレバーを叩き、リールを凝視する。

……うん、『BAR』なんてまったく見えない。見えるワケが無い。断言できる。まず、図柄自体が他より小さい。そのうえ黒地に白文字だなんて、わざと見辛くして初心者を嘲笑っているとしか思えない。

イチかバチかで左リールを止めてみたが、現れたのは『貝殻・サメ・タコ』の脇役三兄弟。リールを覗きこんでも『BAR』のバの字も見当たらない。

ビッグを自力で揃えて自信がついてきた私の心に、『BAR』という新しい敵が暗い影を落とす。こんな時こそ先人にアドバイスをもらうべきであろう。

「堀口さぁ、『BAR』ってコレ……」

「切れ目を狙うんスよ!」

「は?キレメ??」

→NEXT【人魚編10】切れ目??

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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